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「さあ、そろそろ出発しよう。時間が惜しい」
「えー、だるーい!! 茉莉子ちゃん達はどうする?」
腕時計をのぞいてすっかりタイムキーパー気取りなレイネに急かされて、千佳ちゃんが茉莉子ちゃんにこれから一緒に行くかどうか聞いてみた。
「バカじゃない? こんなクソ暑い中、急ぐワケ無いでしょ」
「ま、のんびりでいいかな」
走ってでも制限時間内にゴールしたい派の私達と、少しくらい遅れてものんびり歩きたい派の茉莉子ちゃん達との意見が合わず、解散の方向へと進んだ。
「茉莉子ちゃん、またね」
「ハイハイ。バカみたいに突っ走って倒れても知らないからね」
突き放したような言い方だが、彼女なりの心配の言葉だろう。ありがとう、気を付けるよ。
彼女に手を振って前に走り出そうとした所で、レイネが彼女の前に進み出て、おもむろにその両手を握った。
「有難う。皆を代表して田中に平手打ちを見舞ってくれたのだな」
「は、はぁっ!? 私がムカついて引っ叩きたかっただけなんだけど! 離しなさいよ!」
突然の感謝の言葉を受け止められない茉莉子ちゃんは、逃げるように手を振りほどき、
「こんなややこしい事になったのはあんたのせい! ほら、さっさと行きなさいよ! しっしっ!」
「ふん、知るか」
動物を追い払うような手つきでレイネを拒絶し、友情成立とはならなかった。
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