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「そうだ、飴をいっぱい持ってきたんだ。良かったらみんなでなめて」
「ありがとうございます!」
席を譲ってくれた上に飴までくれるサービスぶりには、ありがたくて涙が出そうだ。こういう優しい所、ウチのお兄ちゃんにも見習って欲しいなあ。
「じゃあね、今度また家においでよ」
「はい、絶対に行きます!」
立ち去る彼女に向かって、私は感謝の気持ちを込めて力一杯手を振った。高速メトロノームのように振り続けていたら、他の上級生にニヤニヤと笑われてしまった。
「遥姉さん、相変わらず天使だなー! あたし大好き!」
「あの先輩、素敵な人だね。カチューシャが似合ってるし」
森田さんが目を付けたカチューシャは遥お姉さんのトレードマークで、今は緩く巻いた長めの髪でポニーテールを結い、その上から挿している。決して派手では無いが、大人っぽくて落ち着いた雰囲気の彼女にピッタリだと思う。
「菩薩の様な人……。中々出来る事じゃないわ」
「大した人物だ。茉莉子とやらに、彼女の爪の垢を煎じて飲ませたい物だ」
「それはアリかもね……」
レイネの意見には大体賛成だ。茉莉子ちゃんに遥お姉さんの優しさ成分が1%でも加われば、もう少し平和に暮らせるのにね。
わずかな会話を交わしたに過ぎない遥お姉さんの存在は、私達の中に爽やかな風となって吹き抜けて行った。そこに帽子を吹き飛ばすような激しさは無く、暖かなオーラに包まれているかのようだ。私もいつかはあんな風になれるだろうか。
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