ラストスパートの景色は

1/19
前へ
/356ページ
次へ

ラストスパートの景色は

東屋を出た私達は、左手に海を見ながら残りの道を軽快にひた走る。 はじめの方こそ、食べたばかりのおなかの調子を気遣ってゆっくり歩いていたが、何となくこなれて落ち着いたのを見計らってギアチェンジした。 地図によれば、ここから先は平坦な砂浜をほぼ道なりに行けばいいだけなので、道に迷って時間をロスするリスクは低い。 もちろん、残り7㎞弱が全て直線コースになっている訳では無いので、地図を見ながらの確認は都度必要になるが、その辺は何とかなると思う。 「あそこに川があるけど、そのまま入って横切ろっか?」 目の前には河口があり、20m程の幅で海に注いでいる。川底が見えるくらい浅めで、サンダル履きの千佳ちゃんなら余裕で渡れそうだ。 「待って。ここは右の土手を登って回り道した方がいいわ」 それに対して浮月さんが回り道を提案した。 「それだと遠回りになっちゃうよー! あれくらいなら大丈夫っしょ」 「私達は平気でもスニーカー組はずぶ濡れになるわよ」 「ブーツでもちょっと厳しいかも……」 確かにスニーカー履きの私やレイネに、ブーツを履いた森田さんも川渡りはツラいから避けたい。 「しかも、そのすぐ先にはもっと広くて深い河口があるの。そっちはとても歩いて渡れるような場所では無いわ。このまま直進しても結局は右に迂回して、川をかなり遡った先にある橋を渡らなければいけないから無駄よ」 ロスも極力避けたい。彼女の情報が本当かどうか、一度立ち止まってスマホの地図アプリを起動してみよう。
/356ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加