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ラストスパートの景色は
東屋を出た私達は、左手に海を見ながら残りの道を軽快にひた走る。
はじめの方こそ、食べたばかりのおなかの調子を気遣ってゆっくり歩いていたが、何となくこなれて落ち着いたのを見計らってギアチェンジした。
地図によれば、ここから先は平坦な砂浜をほぼ道なりに行けばいいだけなので、道に迷って時間をロスするリスクは低い。
もちろん、残り7㎞弱が全て直線コースになっている訳では無いので、地図を見ながらの確認は都度必要になるが、その辺は何とかなると思う。
「あそこに川があるけど、そのまま入って横切ろっか?」
目の前には河口があり、20m程の幅で海に注いでいる。川底が見えるくらい浅めで、サンダル履きの千佳ちゃんなら余裕で渡れそうだ。
「待って。ここは右の土手を登って回り道した方がいいわ」
それに対して浮月さんが回り道を提案した。
「それだと遠回りになっちゃうよー! あれくらいなら大丈夫っしょ」
「私達は平気でもスニーカー組はずぶ濡れになるわよ」
「ブーツでもちょっと厳しいかも……」
確かにスニーカー履きの私やレイネに、ブーツを履いた森田さんも川渡りはツラいから避けたい。
「しかも、そのすぐ先にはもっと広くて深い河口があるの。そっちはとても歩いて渡れるような場所では無いわ。このまま直進しても結局は右に迂回して、川をかなり遡った先にある橋を渡らなければいけないから無駄よ」
ロスも極力避けたい。彼女の情報が本当かどうか、一度立ち止まってスマホの地図アプリを起動してみよう。
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