ランチタイム

6/17

67人が本棚に入れています
本棚に追加
/356ページ
千佳ちゃんの長所であるお日さまのような笑顔は雲隠れして、湿気の親玉みたいにジメッとした顔で辺りをにらみつけては、写真を送った子達を片っ端から問い詰めてまわったけれど、教室内に犯人は見当たらなかった。 「あっ、あの廊下の男子達、写真撮ろうとしてない?」 森田さんの指差す先では、4・5人のグループがこちらにスマホのカメラを向けて、撮影の体勢に入っていた。 「まずい! 伏せて!!」 「うっ!」 これ以上写真を撮られるのは良くないと思い、文庫本のページをめくっていたレイネの背中を押して、机にうつぶせの姿勢を取らせた。 「ぐっ……、いきなり何をする!?」 突然の事で受け身を取れなかった彼女は、手首や肘を机にぶつけてしまい、痛そうにさすっていた。 「だって、写真撮られそうになってたから」 「早川さん、そこまでしなくても……。マフィアの銃撃戦じゃないんだから」 「ほ、ほんとごめんね!」 男子のグループは私の行動に驚いてシャッターを切る事ができなかったから、それなりに効果はあったが同時に被害の方も大きく、もっと他にやりようがあったのは認めざるを得なかった。 そうこうしている内に、千佳ちゃんがズンズンと足音を立てて前方のドアから廊下に出て行った。せっかくかわいく結ったツインテールが乱暴に振り乱れて、怪獣の触覚みたいに恐ろしく見えた。
/356ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加