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そう思っていたら、レイネが私の横に並びかけて耳元で語りかけてきた。
「安心せい、私とて世話になりっぱなしというのは性に合わぬ。それ相応の礼はするつもりだ」
「何が出来るかなあ」
彼女もお礼をしたいという気持ちがあるようだが、何をしたらマダムは喜んでくれるだろうか。
「この辺り一帯の豊作を祈念し、稲光を多めに放つとしよう」
「そんな事出来るの?」
彼女はカミナリ様らしいやり方でのお礼を考えていたようだ。
「うむ。雷一丁、大盛りでな」
「よくわからないけど、安全なやつでお願いね」
雷をラーメンみたいに数えちゃって、本当に効果があるのかなあ。
「善は急げだ。そなたには服を捲ってもらってだな……」
「えっ!? こんな所で出すのはイヤだなぁ……」
「おや、そなたの❝礼がしたい❞という気持ちはその程度だったのか?」
「お礼はしたいけど、今はちょっと……」
いきなり田んぼの真っただ中でおヘソを見せるのは勇気が要る。みんなにも見られてしまうだろうし。
「まあ冗談なのだが。そなたがあまりに我らの術に疑いの眼差しを向けるものだから、からかってみたくなった」
「いや、決してそんなつもりは……」
疑っていた事がバレて肩身の狭い私をよそに、彼女はスピードを上げて前に出た。不機嫌な様子は無く、むしろ私をからかってご満悦のようだ。
田園の風景を名残惜しく感じながらも、その中を順調に駆け抜けた私達は再び砂浜へと足を踏み入れた。
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