ラストスパートの景色は

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人の願い事にちょっかいを出す千佳ちゃんもどうかと思うけれど、絵馬は誰もが見られるように掛けてあったから仕方ないね。 「こいつらのコントは見てて飽きないな……。にしてもお前ら、ここまで走ってきたのか?」 「うん、どうしても3時までにゴールしたくて」 有働君が前方で繰り広げられる2人の掛け合いを眺めつつ、私に話を振ってきた。クールな彼は洞察力も高いらしく、私達の額ににじんだ汗に気付いたのだと思う。 「早くね……!? 俺らも瀧本に急かされて、ここまで結構速足で来たんだぜ。まさか女子に追いつかれるとは思わなかったわ」 「そうかなあ?」 運動部や体力自慢の生徒の中には、トレーニングの一環として砂浜をダッシュしたり神社へと続く地獄坂を登る人も多く、彼らもその口だった。ちょっと頑張り過ぎたかな、レイネもそうだがみんなのエネルギーが切れないか心配だ。 「高みを目指す姿勢、実に素晴らしい。私も君が一流の選手になれるよう祈っているから、精一杯励んでくれ」 「あっ、ああ……。ありがとな……」 そんなレイネは瀧本君に上から目線な激励の言葉をかけ、彼を大いに恐縮させていた。かえって千佳ちゃんみたいにいじってくれた方が居心地がいいのかもしれない。 「高校生が同級生にかける言葉とは思えないな……」 「校長先生とか市議会議員の先生みたいだね……」 それを見ていた有働君や私も大いに困惑するばかりだった。もう少し高校生らしく振舞ってくれないかなあ。
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