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「いかん、梅干しが……」
「ああ、それか……。みんな落ち着いて! 大丈夫だから!」
みんなを落ち着かせる為には、一刻も早く❝このシミは血では無くて、レイネが乗り物酔い防止の為におヘソに貼り付けていた梅干しの汁が、水をかけられた影響でガーゼの上から染み出して服に付いてしまった❞という事を説明しなければいけない。
「こうなってしまっては、もう剥がすしかないな……」
レイネはシャツのおなか周辺のボタンを外し、そこから素肌が見えない様に手を差し入れて、テープ貼りしたガーゼをビリビリと剥がして取り出した。
「うわぁ、臓物が飛び出てる……!!」
「ええ、うそーー!?」
ところが、ガーゼにこびり付いた梅干しを見たみんなは、それを鮮血に染まった内臓の一部と錯覚してしまい、混乱は広がる一方だった。
「違うから! 本当に大丈夫だから! ちょっと落ち着いて聞いて!」
スナイパーの彼が今にも過呼吸で倒れそうになっていたので、私は急いで大きな手振りと声でみんなの視線を引き付けて、梅干しの件を説明した。
「ああ良かった、心臓止まるかと思った……」
「何だそれ、うちのばあちゃんじゃんw」
それを聞いた彼はホッと胸をなでおろし、他のみんなからも笑いがこぼれだした。これでやっと誤解が解けたのだけれど、何で私がこんなヘンテコなおまじないを説明しなければいけないんだろう。
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