ラストスパートの景色は

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「マジでビビった……。俺、もうウォーターガン(こんなの)捨てるわ」 「ま、それが一番平和かもな」 「でも、その銃は悪く無くない?」 「そうだよ、大事なのはそれを使う人の心だよ」 幻の大惨事に遭遇したみんなは、銃の危険性と平和の尊さについて真面目に議論し始めた。はたから聞いていたら、おもちゃの銃の話とはとても思えない。 「そうそう瀧本君、さっきお姉さんにお世話になったんだ。お姉さんがいるって初めて知ったからびっくりしたよ」 「えー、姉貴がまた余計な事をしたんだろ……?」 森田さんからお姉さんの事を言われた瀧本君は、口をだらしなく開いてうんざりした表情をあらわにした。 「全然! 優しくて素敵な人だったよー!」 「だったらいいけどよ……」 彼女の言葉にはからかう気持ちなど1ミリも入っておらず、純粋な感謝と尊敬の念がこもっていて、お姉さんの事を褒められた彼は左肩を搔きながら照れくさそうにしていた。もう高校生なんだから恥ずかしがらなくてもいいのにね。 遥さんと言えば、私も気になる事があったので彼に尋ねてみた。 「そう言えばタッキー、遥さんに会わなかった?」 私達はここまで速いペースで走って来たから、先を歩いている遥さんの姿がそろそろ見えてもおかしく無かった。
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