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「ちょっと前に会ったけど、友達と一緒に後ろの展望台登りに行くって言ってた。たしか涼兄ぃ達も行ってるはずだぜ」
「へえ、うちのお兄ちゃんにしては珍しいな」
どうりで見つからなかった訳だ。私達は、ついに遥さんやお兄ちゃん達までも追い越したようだ。でも遥さんはともかく、うちのお兄ちゃんに展望台を見学するようなロマンチスト属性があっただろうか。
「涼さんと一緒にいた近藤って人が灯台マニアらしい」
「シブい趣味だね」
世の中にはいろんなマニアがいるものだ。お友達の趣味に付き合ってるとしたら、まあ納得かな。
「ねえねえ、遥姉さんや詩乃ちゃんのお兄さんも抜かしたって事は、あたし達がうちのクラスで1番先頭?」
ここに来て、千佳ちゃんが目を輝かせてクラス内での順位を確認し始めた。のんびり派の彼女も、1番乗りの魅力に取りつかれたみたいだ。
「いや、先頭は田中じゃね?」
「そうだな、さっき後ろのバス停から降りて来て、猛ダッシュで走り去っていったわ」
しかし、男子達からは意外な人物の名前が告げられた。
「後ろから他の組の奴らが追いかけてったけど、何だったんだろな、あれ」
「さあなあ……」
男子達から、私達から逃げた後の田中君の目撃情報が寄せられたが、何とも挙動不審だ。
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