67人が本棚に入れています
本棚に追加
「他の組の子って、田中君と一緒にいた人達かなあ?」
「どうだろね、もしかしたら❝別件❞かもしれないし……」
森田さんと彼の状況を推測するも、彼なら走ってる内に他の人達とトラブルになっているという可能性も捨てきれず、イメージが固まらなかった。
「くそー、チャラーノの事だから海の家に一番乗りしてあたし達にマウント取る気なんだよ!」
そして、千佳ちゃんもまた別の可能性を想像して頭に血を登らせていた。
「詩乃ちゃん、走ってアイツを追いかけようよ! ここを一直線にビューンと行けばいいんでしょ?」
「ちょっと待ってよ……!」
ライバルの情報をちらつかされ、今までになく千佳ちゃんのランニング欲に火が点いてしまった。張り合う必要なんて無いのにね。
「いや、違うぞ。ここは❝false straight❞と呼ばれてるんだ」
「誰にだよ……」
スナイパーの彼が、こんなのどかな浜辺に似つかわしくないシリアスな名前を出し、クールな有働君も思わずずっこけそうになっていた。とにかく、一部ではそう呼ばれているらしい。
彼曰く、フォルス・ストレートとは英語で❝偽りの直線❞を意味する。
今歩いている浜辺の先には、微かながらいくつかの海の家っぽい建物が見える。海の家は大会のゴール地点であり、疲れた足を癒す為のオアシスでもある。
最初のコメントを投稿しよう!