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それを見た人は、ここを最後の直線コースと錯覚してラストスパートをかけるのだが、全力を振り絞って海の家の前に着いた時、大きな絶望に襲われる事になる。
なぜなら、その海の家の入り口はどこも木の扉で閉じられており、扉には『休業中』の札が打ち付けられているからだ。そこは私達のゴールである海の家とは別の場所で、本当のゴールはそこから更に1㎞先にあるという事だ。
ゴールへは川を一つ越えなければならず、休業中の建物群の最後尾を右に曲がったところにある橋を渡る必要がある。その先に、今度こそ営業中の海の家まで繋がる最終直線コースが待ち受けている。
「砂漠の蜃気楼を彷徨い続けた旅人の目の前に現れたのは、残酷にも夏の亡霊が潜む砂上の楼閣だったって訳さ」
「何カッコつけてんだよ」
以上がスナイパーの彼によるフォルス・ストレートの詳細だ。どこか間違っているような気もするけれど。
「前田っちありがとー! スタミナをセーブしながら追いかければいいって事だね。じゃ、タッキーおんぶして?」
「しねえよ! 俺、ロング2本食ったばっかで腹キツイからやだよ」
「えー!? じゃ、有働ちゃん」
「俺もやだわ」
「じゃ、詩……」
「だからやだって」
やる気に体力がついて行かない千佳ちゃんはみんなにおんぶをせがんだものの、次々に乗車を拒否された。
「みんな冷たいなあ……。じゃ、レイネちゃんでいいや。ねえ、おぶって?」
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