横一線のゴール

2/17
前へ
/356ページ
次へ
でも、いつもの千佳ちゃんなら第2チェックポイントあたりでギブアップしそうなものが、ゴールまで残り約1.5㎞の地点まで来ているのだから、今日はだいぶ頑張っていると思う。 「みんなー、川の手前で止まってー! ちょっと休憩しよー!」 「うん、わかったー!」 頑張った分、時間に余裕が出来たので、私は前を行く3人に声を掛けて小休憩を提案した。 河口の前まで来てから心臓が止まらないよう徐々にスピードを落として止まると、各々がペットボトルや水筒を取り出して口元に運び、ひび割れていそうなくらいカラカラに渇いた喉を潤した。 「あー、これから回り道なんてだるいなぁ……。このムカつく川そのまま横切れたら楽なのにー!」 千佳ちゃんがペットボトルを空にした後、目の前に広がる河口を忌々しそうに見つめながらグチをこぼした。 ゴールの海の家は対岸の砂浜をまっすぐ進んだ先にあるが、対岸に行くには今いる場所を右手に進み、川を遡った所に架かっている橋を渡らなくてはならない。橋を渡った後は川の流れに沿って砂浜に出る為、コの字型に迂回する事となる。 河口は幅が広く、黒くて底が見通せないくらい深そうな地点もあり、歩いて渡るのは危険だ。近くにいた数学の先生も、「川には絶対入るなよー!」と繰り返し生徒達に注意を呼び掛けていた。もしかしたら、毎年何人かは泳いで渡ろうとする無謀なチャレンジャーがいたのかもしれない。 「ゲームに出てくるような空飛ぶ乗り物があればひとっ飛びなのにね。ドラゴンとか飛空艇とか欲しいよね」 「大袈裟過ぎないかしら」 ファンタジーな空想を広げる森田さんに浮月さんが静かにツッコむ。 確かに、ゲームでは数歩の距離でも気軽に乗り降りしてしまうけれど、呼び出される乗り物の方はいい迷惑だと思う。
/356ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加