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「これしきの川幅など、私ならひとっ飛びなのだが」
それを少し離れた場所で聞いていたレイネが、私の耳元でボソッとつぶやいた。カミナリ様である彼女は空を飛べるので、彼女一人なら橋を渡らずに川の上を飛んでショートカットも出来るだろう。
「今はダメだよ」
「違いない、今の私は人間の娘なのだからな」
でも、みんなが見ているから今は絶対禁止。
もしや、疲れたから空を飛んでショートカットしたくなったのかなとも思ったけれど、彼女の表情はいかにも「今のは冗談だ」と言わんばかりににこやかで、フランス人形のように淡く色付いた桜色のほっぺからも、まだまだ余力があるように見えた。
「よし、そろそろ行くとしよう」
「OK!」
「えー……」
余力のあらわれなのか、彼女は休憩も短めに切り上げてみんなに出発を促した。急かされた方のリアクションは様々だったが、すぐに全員同時に川上へ足を向けた。
河口から橋までは約200mあり、遡るにつれて川幅は細く底の石が見えるくらい浅くなっていく。ただ、道と川底の高低差が3mはある為、橋以外の場所で渡るのは諦めた。
それと、対岸の砂浜に入るまでは歩く事に決めた。田中君を追い抜く為に頑張っていた千佳ちゃんの体力が限界に近づいていたので、砂浜についてからラストスパートをかける事になった。追いつかない方がいい場合もあるしね。
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