横一線のゴール

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辺りには高い建物も無く、河口から既に視界に映っていた橋には、迷う事無く到着する事が出来た。 今度渡る橋は、さっきの田園地帯に架かっていた橋と比べると、だいぶくたびれている。 橋の路面はうずらの卵ほどの石がちりばめられた粗めのコンクリートで、幅は車がすれ違う事が出来ない狭さだ。錆びて赤茶色した鉄製の欄干も、私の太もも辺りまでの高さしかない。川の水深が浅い為、落ちても流される事は無さそうだが、近くにはカッパの絵が描かれた❝増水時には川に入らないで!❞という内容の看板が立っていた。 「随分古い橋ね。昭和中期……、もしかしたら前期に架けられた物かもしれないわね」 「どうだろうね」 隣にいた浮月さんの鑑定からすると、かなり古い橋みたい。上流には新しく架けられた大橋がある為、交通の不便は無いらしく、それもあってここは架け替えされずにレトロな雰囲気を醸し出しているのだという。森田さんは先に向こう側に渡り、ここもポートレート写真の題材にピッタリだと言って橋を渡る私達の姿をカメラに収めていた。 「あー、あっついなあ……。こんなに暑いと川で泳ぎたくなっちゃうよねえ」 写真に撮られている最中だというのに、千佳ちゃんは火照った身体を冷やそうと、Tシャツのすそを持ってバサバサと上下に扇ぐように動かした。 「望月さん、おヘソ出てるよ!」 カメラマン役の森田さんが指摘しても、おなか丸出しの千佳ちゃんは特に恥ずかしがる様子は無い。相変わらず彼女のおヘソセキュリティは甘い、他の人にも見られてしまうから、早くしまった方がいいと思うけれど。
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