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「これ、ヘソを出していると河童に狙われるぞ」
「またまたー! カッパはヒップでしょー?」
見かねたレイネもカッパの看板を指差してたしなめるが、それもどこ吹く風とばかりにすそをまくって扇ぎ続ける。カッパは人間のお尻にある❝尻子玉❞を抜く妖怪なので、説得の言葉としてはちょっと無理があったようだ。
「あら、空が曇って来たわね」
「あ、ホントだ」
浮月さんが上空を指差すと、いつの間にか雲が太陽を隠すほどに空を覆っていた。強い日差しに照り付けられなくなるのはありがたいが、雨に降られないか心配だ。
「カミナリ様が望月さんのおヘソを取りに来たのかもしれないね」
「そ、そんな訳ないし!」
森田さんのジョークに千佳ちゃんの自信が揺らぎ始めた。普通、高校生にもなってそんな迷信を真に受けるはずは無いけれど、上空の雲の一部は不気味に黒ずんでいて、そこにカミナリ様が潜んでいるように見えなくも無かった。
「可哀想に。今撮った写真に写っているのが、最後の姿になってしまうかもしれないわね」
「このヘソも見納めだな」
「うぅ……」
そこへ浮月さんが顔色一つ変えずに怖いジョークを重ね、レイネは頭を低くして千佳ちゃんのおヘソをのぞき込んだ。そうまでされると千佳ちゃんもだんだん落ち着かなくなり、すぐにTシャツを下ろしてその上からおなかをさすった。
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