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「わかったよ! しまえばいいんでしょ、しまえば! みんなの意地悪ー!」
「まあまあ……」
ついに観念した千佳ちゃんは、ほっぺをふくらませながらTシャツのすそをデニムの短パンの中に詰め込んだ。みんな良かれと思ってした事だったので、早く機嫌を直して欲しいな。
「ふーんだ! カミナリだろうがカッパだろうが、あたしのビューチフルおヘソには指一本触れさせないもんね!」
「はいはい」
しっかりとシャツインしたまま強がる千佳ちゃん。カミナリ様にはもう触られてしまっているのだけど……。
橋を渡った私達は、右手に松の林、左手に川を見ながら浜辺を目指す。松林の奥には砂浜が広がり、そこが海の家までの最終直線コースだ。
今歩いている道は幅が狭く他の生徒もいる為、慌てずゆっくりを心掛けつつ、砂浜を走る前の休憩に充てた。
とは言え、たった200mしかない川沿いの道はすぐに終点を迎え、約1㎞の直線コースの入り口へと到着した。海を見ると、出発した時よりも潮が引いて波が遠ざかっていた。
「おーし、こっから海の家まで競争な! 負けた奴が1番の奴にアイスおごりな!」
「おっしゃ! 俺自信あるぜ!」
「今年は負けねーぞ。位置について、よーい……ドン!」
そこでは、何組かの男子生徒達による競争が行われていた。ほぼ平らでまっすぐな海岸線が競争にもってこいの実に走りたくなる砂浜だからなのか、それとも早くゴールに着いて休みたいという気持ちからなのか。
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