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「うーん、もうちょっと様子を見てみようよ。本当にヤバいと思ったら突入しよう?」
「そうだな、小学生じゃあるまいし」
高校生同士だからそうそう殴り合いのケンカにはならないだろうし、私達が割り込んで逆に話がややこしくなってもいけないので、ここは様子見が一番だろう。
「何でそういう事するの!? みんな困ってるじゃん!!」
「何だよ、別にいいだろ?」
ただ、このやりとりを静観するのは精神衛生上よろしくなかった。千佳ちゃんが文句を言っても田中君は聞く耳を持たず、頬にかかるほど長い前髪をかき上げてクールなキャラを気取っていた。そのナルシストな言動が、怪獣と化していた千佳ちゃんをますます興奮させてしまい、冷静な話し合いは期待出来そうに無かった。
そして、次に彼が放った一言で交渉決裂が決定的となった。
「ケチケチすんなよ、どうせタダなんだから」
もうダメだ、こんな事を言われて彼女が黙っている訳が無い。
「はあ!? 何勘違いしてんの!? このキモチャラーノ!!!!」
我慢の限界を超えた千佳ちゃんは、謎の言葉とともにローキックを田中君の膝にお見舞いした。
「いってえ! くっそ、いってえ!!」
蹴られた痛みで顔を歪めて床にゴロゴロと転がる彼を見て、「最悪の事態が起こってしまった……」と、私は頭を抱えた。
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