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いざ、約1㎞はどれくらいかかるのか。学校のグラウンドの1000m走なら5分を切れるけれど、ここは砂地でスピードが出にくいから、もっとかかるだろう。
「あと数分の旅路か、名残惜しい物だな」
ウェーブヘアを揺らしながら走るレイネが言うように、どの道あと少しでゴールだ。ここは私も楽しむ方のスタンスで行こう。
まずは前方の様子を確認してみよう。
1分前にスタートした千佳ちゃんの姿は見えない。元々、小さな彼女は他の生徒達に隠れて見づらいのだが、その生徒達も多くが私達同様走っている為、余計に紛れてしまっている。
なぜ多くがそんな❝暑苦しくて信じがたい❞事をしているのか。その理由は、この先にある物によって引き起こされていた。
前方には巨大なバルーンを空気で膨らませたアーチ型のゴールが設営されていた。アーチの直径が10mくらいあり、マラソン大会で使うような立派なゴールには❝静波高等学校 FINISH 浜歩き大会❞の文字が遠くから見てもわかるように大きく記され、さらにアーチの左横にはこれまた陸上競技で使うデジタル式の大型タイマーが1秒1秒時を刻んでいた。これだけ本格的なゴールがあれば、みんながラストスパートしたくなるのも無理は無い。私も走る気を大いにかき立てられた。
「レイネ、最初から飛ばさないようにね」
「ああ。それと、効率よく波打ち際に近い所を走ろうぞ」
「わかった」
みんなを追う私達は、出来るだけロスを抑えた進路を選択した。
波打ち際に近い場所を通るのは、表面が水を吸って硬く締まっている為スピードが出やすいし、道路側よりも平坦でゴールまで最短距離で進む事が出来ると考えたからだ。
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