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「わぁ、それはちょっと……」
「恥ずかしいわね」
千佳ちゃんは❝手つなぎゴール❞をリクエストしたが、森田さん浮月さんはあまり乗り気で無く、期待に目を輝かせる千佳ちゃんから顔を背けた。まだ出会って1ヶ月の関係だし、ためらう気持ちはわかる。
「まあまあ、走ればあと10秒かそこらだから……」
でも、ここで千佳ちゃんがヘソを曲げたら困るので、私は2人をどうにかなだめて手をつないでもらった。私は千佳ちゃんにガッチリ腕をつかまれていたので、拒否権が無かったしね。
「よーし、イチ・ニで進むよ! イチで右、ニで左ね!」
「はーい」
センターで指示を出す千佳ちゃんに右側は私と森田さん、左側はレイネと浮月さんが手をつなぎ、一団となってゴールを目指す。
「おっ、今度は仲良し五人組が来たぞ!」
「五人六脚とは余裕だな! 今年の1年は元気がいい」
先生方に冷やかされながら、❝イチ・ニ❞の繰り返しでダッシュする。お互い体格が違うのに歩幅も出す足もそろっている辺りは、この旅で養ったチームワークの賜物なのかもしれない。それは最後まで乱れる事無く砂地をとらえ、
「あと10歩……、5歩……、1……、ゴーーールイン!!」
午後2時44分02秒、ついに私達は横一線でゴールのアーチを駆け抜けた。
そして――、
「やったやった! ミッション達成……!」
「皆、よくぞついてきてくれた!」
「みんなおつかれー!」
すぐに一つのかたまりとなって、お互いの健闘をたたえ合ったのだった。
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