海の家でのひと時

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海の家でのひと時

ゴール後は、すぐ近くの仮設テントに向かい、到着の報告を行った。 先生がチェックしている名簿をちらりとのぞいてみると、どのクラスも4~5人程度しかゴールしておらず、いかに私達が頑張って追い込んだかを示していた。 その後は一目散に海の家に逃げ込むかと思いきや、しばらく外で完走の余韻に浸った。アーチの後ろでは記念写真を撮る人々の姿が多く見られ、私達も近くにいた先生にカメラを預け、5人揃っての写真を撮ってもらった。 我ながらよくぞここまで頑張れたものだと、これまで歩んできた砂浜をしみじみと見つめる。アーチの向こうには、ついさっきまでの私達と同じようにゴール目指してダッシュする生徒の群れが広がっている。2度と走りたくは無いけれど、眺める分には百人以上がいっぺんに走る様は圧巻だ。あの中のどこかに瀧本君達もいる事だろう。 この後はお待ちかね、海の家での休憩だ。1000人以上の学校関係者がここで同時に休む為、学年・クラス毎に割り当てられた建物で分かれて休む事になる。 私達1年A組が利用するのは、ゴールから1番手前の建物だった。そこは、錆びた鉄骨フレームの上に屋根を張った工場のような構えで、入り口前には浮き輪やサーフボードにかき氷ののぼりが季節感を演出していて、屋根の下には地面から少し高い位置に畳の座敷が広がる、いかにも昔ながらの海の家だ。 「あー、私達の❝海の家ガチャ❞微妙かな? あっちの方がおしゃれでよさそうだけど……」 「あら、特に不足は無いと思うけれど」 森田さんが残念がっているように、クラス毎に利用する施設が異なる為、設備等には若干の差が出る。奥に見える施設は最近建てられたと見られる洋風の建物で、海側に向いたエボニーのウッドテラスにアイボリーのパラソルが目を引く。フードメニューもハンバーガーやデコレーションパフェが売りの、海の家というよりはカフェのような施設だった。あっちも素敵だけれど、私にはおしゃれ過ぎて敷居が高いかな。
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