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「早く畳の上で足を伸ばしたいものだ」
「そうだね」
おしゃれさでは洋風に2・3歩譲るが、まるで親戚や祖父母の家に遊びに行った時のような居心地の良さが、昔ながらの建物の魅力だと思う。レイネも見た目に似合わず、由緒正しい海の家の良さがわかるらしい。
いざ入場! と建物の入り口まで来た時、
「どけっ!」
「うわっ!」
どこかの男子がものすごい勢いで飛び出してきた。
いや、あれは田中君だ。いつの間にか上はアロハシャツ1枚だけ、下はサーフパンツという海水浴スタイルに着替えていたので一瞬わからなかった。たぶん、海の家の更衣室を借りて着替えたのだと思うが、どこか泳ぎにでも行くのだろうか。
「くっそー、チャラーノに負けちゃったよー!」
残念ながら、田中君の方が私達より先に海の家に到着していたのだった。本当はさっき完走報告の時に見た名簿で確認済みだったのだが、千佳ちゃんを興奮させまいと心に留めておいた。
予想通り、彼女は田中君を追い越す事が出来なかった事を地団駄踏んで悔しがった。もうそんな事どうだっていいのにね。
田中君はそんな彼女に構う事無く、ゴールの先に延びる砂浜へと駆けてゆく。
そして直後にもう一人、今度は女の子がふわっと飛び出してきた。
「おーい、待てってばー!」
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