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こっちはクラスメイトの鈴木さんだ。
「アローハ! みんなおつー!」
クラスで1番ギャルな彼女は、手でアロハのサインを作りながら、アンバーに染めた巻き髪を振り乱し、私達を避けて田中君の後を追う。明るい性格をしているけれど、私は彼女と話す機会が少なかったので、まだどんな子かはっきりわからない。
「萌奈ちゃん待って! おーい鈴木さーん、現場の鈴木さーん!」
「あ、はいはい、もっちりもちちかどしたー?」
そこを千佳ちゃんが中継リポートみたいに呼び止めた。すぐに立ち止まって冗談で返すあたり、2人の仲はいいらしい。
「どこ行くの?」
「なんか田中が❝岩場で漁をするから撮影係として付いて来てくれ❞って」
彼女の話によれば、田中君は岩場でサザエやウニを獲りに行くという。
「それっていけない事なんじゃ……」
「行かなくていい! そんなの行かなくていいよ!」
「あんなのほっといて、あたし達とここでのんびりしよーよ!」
今日の彼を見ていたら嫌な予感しかしなかったので、みんなで彼女を引き留めたが、
「あんがと。でも行かないと後でめんどくさいからちょっとだけ見てくるわ、だるいんだけどね」
そういって彼女は再び岩場へと舵を切ろうとした。
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