海の家でのひと時

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「そうそう、海の家でジュース1本もらえるから。オレンジでもコーラでも好きなの選んでいいんだよ」 「やった、うれしー!」 「何かあったら電話をくれても構わないが」 「あはは、大袈裟! それじゃ、またね! うぉー、あっちいあっちい!」 彼女は最後に耳寄りな情報を残して走り去って行った。少しでも涼しくなろうと、彼女は走りながらTシャツのすそを結び、私達にヘルシーな背中と腰を見せつけた。田中君といい、彼女も夏を先取りし過ぎだと思う。 それにしても、何で鈴木さんが田中君の密漁現場について行ったのだろう。今までなら、彼の友達がずっと後をついてきていたのに。 「千佳ちゃん、田中君と鈴木さんって仲いいの?」 「家が近所なんだって。最悪だね」 千佳ちゃんの情報網によれば、彼らも私や千佳ちゃん達と同じく、小さい頃からの幼なじみとの事。だとしたら、暴走気味な彼の行動にも少しは慣れているんだと思う。 「こらこら、中に入んないのかい? そんな暑いとこで突っ立ってちゃダメじゃないか」 お店の前で話に夢中になっていたら、年季の入った日焼けが印象的な恰幅の良いおばさんに話し掛けられた。ネイビーの前掛けが似合うこの人は、ここのおかみさんで、何で早く涼しい屋根の下に入らないのか不思議そうに私達を見つめていた。 「こ、こんにちは! お世話になります!」 「はい、こんにちは。お疲れ様、さあ入った入った!」 気まずかったのですぐにあいさつすると、おかみさんは笑顔で返してくれて、大きくてパワフルな腕で私達を1人ずつ建物の中へと押し込んだ。
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