海の家でのひと時

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私も今すぐ2階に行きたかったけれど、レイネと浮月さんがお土産を見たいと言うので、重い荷物を下ろしたい森田さんには先に上がってもらい、3人でお土産物コーナーをのぞいてみる事にした。 陳列棚には地元で獲れた魚介類や野菜の他、海の生き物のぬいぐるみに❝JAPAN❞と描かれたアニメキャラのキーホルダーに木刀等、サービスエリア以上に何でもありの商品達が並べられていた。 「なかなか面白い品揃えね」 浮月さんはタコが馬に跨った不思議なぬいぐるみを手に取り、360度くまなく眺めていた。こういうかわいい物が好きなのかな。 お土産といえば、❝褒美を取らせたい病❞にかかったレイネも、棚の上下左右をしっかりと見回して商品選びに余念が無い。ここは良くも悪くも何でもありな品揃えなので、かえって逸品が見つかるかもしれない。 「あれなど良いかもしれぬな」 「何だろう、あれ……」 そう言ってレイネが指差したのは、壁に掛かっていた額縁入りのイセエビだった。賞状を入れる薄い額縁とは違い、箱のような厚みを持たせた真ん中の空洞にイセエビがピンと背筋を伸ばして収まっているが、何でイセエビがそんな所に入っているのだろうか。 額縁の下のPOPをよく見ると、❝伊勢海老のはく製❞と書かれていた。 後でおかみさんが解説してくれたのだけれど、これは生きたイセエビではなく、脱皮したイセエビの殻を乾燥させて組み立てた物で、健康長寿や必勝祈願の置物として親しまれているそうだ。
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