岩場からのSOS

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岩場からのSOS

食事がひと段落つくと、プラスチックのケースからビン入りのジュースを取り出し、みんなで縁側に行き外の景色を楽しむ事にした。 沢山踏み込まれてニスの剥がれた床板は、一歩目からギシギシと不穏な音を奏でる。エレガントな私達でさえこれなので、この後もっと元気な子達が集まったら床が抜けないか心配だ。 きしみが収まったのを見計らい、縁側でビンに口をつけながら、下の様子を眺める。渇ききっていた私達にとって、水分はいくらあっても困らない。おなかがタプタプになる事も無く、身体全体がスポンジの如く水分を受け止める。こういう時の甘味は格別だし、ビンのひんやりした感触がジュースの美味しさにひと味プラスしているみたいで好きだ。ジュース1本がサービスでもらえるなんて、本当にありがたい。 「わぁ、海! あの島って人が住んでるのかな?」 「見てよ詩乃ちゃん、まだあんなにいっぱい歩いてるよ?」 「ほんとだね」 私達だけに見えている、静けさとにぎやかさの入り混じった光景。左側はゴール前の生徒達が向かってくる砂浜、正面は無限に続いていそうな大海原、右側はどこかに田中君達がいるであろう岩場。1年の中で浜歩き大会の日にしか映し出す事の出来ない、この大パノラマを独り占め出来るのもあとわずかだと思うと、余計に貴重に思えてくる。 「あれは瀧本君ではないか?」 「えっ!? どこどこ? 全然わからないんだけど……」 「あそこだ。ゲートの延長線上に黒のTシャツを着た者が走っているであろう?」 両眼で2.0視える私より、レイネはずっと眼がいい。彼女のガイドに従い、目を凝らしてそれっぽい小麦色ボーイを探すと……、いたいた、肩まくりした背の高い男子が!
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