岩場からのSOS

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あの躍動感あふれるランニングフォームは瀧本君以外ありえない。おそらく私達と同じく仲間内で競争をしているのだろう。彼はゴール手前で後ろを振り向き、後続が追い付いて来ないのを確認すると、スピードを緩め右手を高々と挙げてゴールゲートをくぐり抜けた。 それから少し遅れて有働君、更に遅れてスナイパーの前田君がゴールし、中腰の姿勢で何か話をしていた。さすがは瀧本君、走攻守三拍子揃った野球選手になりたいと願うだけあって、彼の仲間に影も踏ませなかったようだ。 「瀧本君ってすごく走るの速いんだね!」 「ただの脳筋バカだけどね」 「また余計な一言を……」 森田さんのお褒めの言葉に水を差す千佳ちゃん。ケンカになるといけないから、本人の前ではそんな事言わないで欲しいな。 やがて、瀧本君達は私達のいる海の家の入口をくぐり、下の階で食べ物を買った後、階段を上がって来た。 「あっ、タッキー達お疲れ!」 「あれ? 何だ、お前らしかいないのか!?」 「うん、B組はまだ誰も来てないっぽい」 彼の持つお盆には、焼きそばとおにぎりにから揚げ等、一人では食べきれ無さそうな量の食べ物が載っていた。たぶん一人で完食するつもりなんだろうと思うけれど。 「そっか。ま、んな事どうでもいいか。疲れたから足のばしてえわ」 「ちょっと、男子チームはそっち行って!」 「わっ、あぶねーだろが!」 私達が使っている座卓の隣に陣取ろうとしていた彼の前に、千佳ちゃんが急に立ちはだかってつっぱり攻撃を仕掛けたので、彼はお盆を揺らして食べ物を落としそうになった。
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