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電話は1コールもせずに、電話がかからない事を伝える自動音声のアナウンスが流れてきた。
「よもや、何か良からぬ事態に陥っているのやも知れぬな……」
「まさか」
私は単なる圏外ぐらいにしか思っていなかったのに、彼女は表情をくもらせて縁起でも無い言葉をつぶやいた。
「誰か、A組の鈴木萌奈から連絡のあった者はいないか!?」
そして、窓に背を向けると凛々しい声を響かせ、2階にいるみんなに広くたずねて回った。
「いや、無いけど……」
「無いでーす。てゆーか、まだ話した事すらねーしな」
しかし、誰も連絡を受けておらず、何の手がかりも得られなかった。私も森田さんや浮月さんにあたってみたが、どちらも首を横に振った。
「そうだ、千佳ちゃんは?」
鈴木さんと仲の良い千佳ちゃんなら、連絡を受けているかもしれない。そんな彼女は今1階にいるようなので、急な階段を踏み外さないよう慎重に駆け下りた。
下りた先を見渡すと、1階席は3/4近く埋まっており、畳の上で疲れて寝転んでいる子や、入口には雷に驚いて駆け足で避難してきた子達の姿が見えた。その賑わいの中、お目当ての千佳ちゃんは5人程のかたまりを作り、トランプに興じていた。
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