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「不吉な予感程的中するとは言うが……」
レイネはうつむき加減であごに手を当てながら、悲観的な言葉をもらした。何でそう思ったのかはわからないけれど、そんな態度を取られると私まで不安になってしまう。
他に誰か手がかりを知っていそうな人はいないだろうか。再び辺りを見まわすと、適任な男子が1人隅っこのスペースであぐらをかいているのが見えた。
彼はB組の男子で、田中君に暴走を止めるよういつも一番最初に声をかけていた子だ。彼は焼きそばをほおばりながら、近くの友達とおしゃべりをしてくつろいでいた。そうだ、彼なら田中君と連絡が取れるはずだ。それが出来れば田中君と一緒にいた鈴木さんの安否がわかるかもしれない。
邪魔をするのは悪いが、緊急事態かもしれないのでさっそく近づいて声をかけた。
「ちょっとごめん。田中君のスマホの番号って知ってる?」
「知ってるけど、どうせ繋がらねーよ。だって、あいつのスマホぶっ壊れてたし」
「あー、そうなんだ……」
彼は律儀にも焼きそばを食べる手を休めて私の質問に答えてくれたが、その口から出たのはとても残念なお知らせだった。連絡が取れないなら、せめて他に何か情報は得られないだろうか。
「田中君、岩場に行ったみたいなんだけど、どこらへんかわかる?」
「さあ、ゴールした後は会ってないからわかんないな。てか、もうあいつの事はほっといたらいいんじゃね?」
彼の答えは、一緒に長い道のりを歩いた友達に対する言葉とは思えない、冷たいものだった。
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