岩場からのSOS

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「ぶっちゃけ、今日はあいつに振り回されたせいで全然楽しめなかったし」 彼の表情が仏頂のベクトルに向かってこわばっていくのを感じる。今日一日の彼らを見ていたら、それはしょうがない。 「お前らだって、迷惑かけられっぱなしだっただろ? ドローンで馬暴れさせたり、記念撮影してるとこ邪魔したりしてよ。変な写真や動画もいっぱい撮られてるんじゃね?」 「それは……」 私達だってそうだ。鈴木さんと一緒にいなければ、わざわざ田中君に関わろうとはしなかっただろう。 「そもそも、俺達のスタートが遅れたのだって、あいつがサービスエリアで他の奴ら連れて行方不明になって、それ待ちしてたからだし」 「そうなんだよね……」 それも事実で、サービスエリアでの休憩の際、田中君は集合時間を過ぎてもバスに戻って来なかった。その理由は、ゲームコーナーのクレーンゲームに夢中になり、景品をゲット出来るまで粘っていたからで、そのせいで私達を含むいくつかのクラスの出発に遅れが出てしまった。あの時は他のクラスの子も一緒だったのでまだ笑って許されていたが、こうして悪行を積み重ねた今となっては、痛い減点材料の一つとして数えられてしまう。 「俺らまで同類に見られたらイヤだし、もうあいつとは関わらないつもりだわ。他のやつもそうだと思う」 ますますヒートアップしていく彼からは、もう何も情報を得る事が出来無さそうだ。他人事なのに、絶交宣言を聞かされる方は何だか落ち着かず、氷水にずっと手を浸けている時の刺すような冷たさの中に閉じ込められてしまった。
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