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「おまけにこんな天気に岩場とか、バカじゃん。雷に打たれた方がちょっとはマシになんじゃね?」
それでも言い足りない彼の口から、容赦ないコメントが飛び出した。気持ちはわかるけれど、言い過ぎじゃないかなあ。
「詩乃、他をあたろう」
「あ、わかった……」
ずっと私の後ろに控えていたレイネも彼から手がかりを得る事を諦め、私を引き上げさせようとした。
「君にひとこと言っておこう」
そして、彼に近づいてお言葉を述べようとした。お礼くらい私だって言えるのに、そうやってすぐに代表面するんだから。
「雷を甘く見るな」
「え……?」
表情こそあまり変えなかったが、凛々しい声にはいつにも増して凄みを感じた。言われた方も、やがてひれ伏してしまいそうなくらい後ずさりし、その場には雷が弾けたような衝撃が走った。たとえ言葉のあやだったとしても、彼女にとっては聞き捨てならないジョークだったらしい。
ドン、ドーン、ドーン!!――――
「こうなったら自分で確かめるまでだ。詩乃、傘を持て! 出るぞ!」
「うわっ、待って……!」
せめて靴くらいはちゃんと履かせて欲しい。鳴り響く雷の音をじっと聴いていられなかった彼女は、私をお供に外へと飛び出した。
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