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雷の影を追って
田中君・鈴木さん捜索隊の私達は、海の家を飛び出すと、店の外に立っていた白石先生の制止を振り切り、岩場へとまっしぐらに向かっている。
私の耳には、白石先生の「お前達、何をしている!? 危険だから中に入れ!!」という強い警告が突き刺さったまま抜けない。
先生の言う事はもっともだ。外は雨こそ降っていないが、空には薄汚れた綿を雑に伸ばしたような雲が広がり、雷も一定のビートを刻みながら砂浜に打ち付けている。こんな危険な状況で飛び出して行くのは大いに間違っているから、たとえ無事に戻って来れたとしても、こっぴどく怒られるだろう。
「どうした? 遅いぞ」
前を走るレイネが振り向き、悩み事を抱えて減速気味の私を急かす。彼女は自分の勘によほど自信があるのか、私と違って足取りに迷いが無い。
「ごめん。ああ、嫌な天気だなぁ……。雷が落ちませんように……」
とても低い確率とはいえ、こんな天気では田中君達を見つける前に私が雷の餌食になる可能性もゼロではない。
「それは杞憂というもの。雷が雷に当たるヘマはせぬ」
「私は普通の人間なんですけど……」
私の不安を涼し気な顔で一蹴する彼女。そりゃあカミナリ様はそうだろうけれど、少しは私の事も心配して欲しい。全く頼りにならない彼女にがっかりしつつ、どうか当たりませんようにと心の中で手を合わせた。
「案ずるな、私の周りには雷除けの結界を張り巡らしている。私が傍に居れば、そなたに雷が落ちる事等有り得ぬ」
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