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「間違いない、これは雷が落ちた跡だ」
彼女は、それを落雷の痕跡だと断定した。
その後も、彼女はこの付近で更なる手がかりを見つけた。
近くには、この先の岩場での漁を禁止する看板が立っていて、道路へと続く階段にはなぜかサザエやアサリが数個散らばっていた。階段を上って歩道に出ると、アスファルトにはまた丸い穴が点々と刻まれていて、それを追っていくと横断歩道の前までたどり着いた。
「これは厄介な事になりそうだ。急がねば、永遠に失われてしまう……」
表情はそれ程曇ってはいないが、何だかとても不吉な言葉を吐いた彼女。一連の状況が田中君達とどう関係しているのか説明してくれないまま、足早に信号の無い横断歩道を渡る。
渡った先の景色に、これといって目立つ物は無かった。正面には竹が連なる山道、左右を見まわせば海沿いをなぞる道路が続いてるだけの、ありふれた田舎の風景だ。
「痕跡が紛れていて、辿りにくいな……」
「え……、まずくない!?」
だが、ここで問題が発生した。長年補修をされていない歩道は傷みが激しく、コンクリートに出来た無数の剥がれやひび割れが、落雷の痕跡を隠してしまっていたのだ。こんな時に田舎の道に牙を剥かれる思わなかった。
「そうだ、このシャツの匂いを嗅いで辿ってみたらどう?」
「犬程の嗅覚は無いが……、やってみよう」
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