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雨の勢いはマシンガンか高圧洗浄機か。どちらにせよ、このゲリラ豪雨で捜索活動は致命的なダメージを受けてしまった。
「ねえ、あなたの力でこの雨を止ませる事って出来ないの?」
カミナリ様である彼女なら、雨を止められるのではないか。実は、彼女が初めてうちに来た日も激しい雷雨だったけれど、彼女は雷雲に向かって光の矢を放ち、雲もろとも雷雨を消し去ってくれた事があった。
「残念ながら無理だ、❝出所❞がわからぬ限りは」
「そっかぁ……」
そう都合良くは行かないらしい。結構期待していただけに、私は彼女の前で大きくうなだれてため息をついてしまった。
「何の。手がかりなど如何様にも見つけられる!」
もしも、私の態度が彼女のカミナリ様としてのプライドを傷つけたのなら、謝りたい。彼女は私に反論する事もせず、竹に囲まれた山道へと進んでいった。
雨に濡れた竹の枝葉が瑞々しい。日本的な神々しさと不気味さの二面性を持つこの場所なら、何かが起こっていても不思議では無い。だが、それは勘でしか無く、この道を進むべき論理的な根拠は無い。冷静な彼女も、手がかりを見つけられなくて、やぶれかぶれになっているのだろうか。せめて、近くに誰か歩いていたら、話を聞けるのだけれど。
「ここは、あちらのご両人に話を聞こう」
彼女もそう考えていたのか、道行く人への聞き込みを行うようだ。
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