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それにしても、道祖神と会話が出来る彼女は流石神様だ。
私も道祖神の声が聞こえたらいいな、なんてダメ元で像の右側に顔を近づけ耳をそばだててみた。
――「学生服が何でも揃う!! もちぃーーづきぃーーーー!!!!♪」――
「ぐわっ!!」
すると突然、男性オペラ歌手みたいなテノールヴォイスが私の耳をつんざく勢いで流れてきて、私は傘を持っていない方の手で左耳を押さえた。
「ははは、そちらの道祖神殿は中々にお茶目な事をなさる」
「なぜ今それを……」
レイネはおなかに手を当てて大いに笑っていたが、お茶目にも程がある。あれはTVでおなじみの、学生服専門店のCMソングだ。
「お供えするのやめようかな……」
「これ、何と心の狭い事を! ご両人、このお礼はまた改めて。詩乃、行こう!」
「う、うんわかった! あの……、ありがとうございました!」
この大事な時にからかわれてイラっときたので、お供えをキャンセルしようと思ったけれど、レイネに手を引かれ、とりあえずお礼を言って足早にその場を立ち去った。
「喜べ、2人の居所がわかったぞ。おそらく、この先にある小さな社だという事だ」
「良かった……」
その後の私達は、二股の道を左に進んでいる。彼女の話によれば、道祖神の目の前を田中君達が雷に追いたてられて通り過ぎて行ったとの事で、そうなった人間は、ほぼ間違いなくこの先の社に誘われるらしい。その社に繋がる石段も既に目と鼻の先で、2人との再会も間近だ。長年この場所を見守ってきた道祖神はやっぱり頼りになるなあ。
「あと、女神が❝そっちの娘は、反応が新鮮でかわいいわね❞と笑っていたぞ」
「全っ然嬉しくない……」
でも、からかわれたのはちょっと悔しかったので、戻ったら飴玉を取り返そう。
そんな罰当たりな事を思いながら、レイネの先導で石段の1段目に足をかけた――。
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