小さな社の秘密

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小さな社の秘密

石段を登る私達の視界を遮るような煙る雨は、頂上の景色にもやをかけている。坂の上の神社と違い、段は100と続いてないので助かるが、その先で何が待っているかわからないだけに、不安は尽きない。 「案ずるな、2人は私が必ず助ける。そなたの協力も必要故、今暫く共にいて貰う事になるが」 「わかった!」 気持ちが表情に出てしまっていたのか、レイネが頼もしい言葉で励ましてくれた。 思えば、わからない事だらけの中、今までずっと彼女の言う通りに進んで来た。そして今、彼女はこの件について確信を得ているに違いない。だとすると2人は今どうしているのか、私が彼女に協力出来る事とは何か、全ての答えは石段を登った先にあるのだろう。 覚悟を決め、残り十数段をペースアップして登る。階段の両脇には側溝が掘られており、頂上からの雨水を石段から逃がしてくれていたおかげで、1段飛ばしで登っても足を滑らす事は無かった。 「着いたな。さて、どこにいるのか……」 2人並んで頂上を踏み、端が欠けた石造りの鳥居をくぐり抜け、辺りを見回す。 坂の上の神社の広い敷地とは違い、この社は街中にいくつもある公園くらいの広さの、こじんまりとしたものだった。この雨では参拝客も寄り付かず、宮司さんも社務所に引っ込んでしまったのか、表には誰もいなかった。 さて、田中君達はどこにいるのか。正面奥にある本殿の軒下か、敷地の右側にある社務所の中か、あるいは左側にある東屋の下か。建物の中に避難出来ているのなら一安心なんだけれど……。
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