小さな社の秘密

3/15

67人が本棚に入れています
本棚に追加
/356ページ
その答えを見つける前に、田中君達の姿は鮮明になった。2人は手水舎の柱の下、目を閉じ肩を寄せ合って腰掛けていた。 「鈴木さーん! 田中くーん!」 2人とも私の呼びかけには応えず、長い間雨に打たれていたのか、てっぺんからつま先までずぶ濡れで、前髪はワカメのようにおでこに張り付いている。 岩場にアロハシャツを脱ぎ捨てた田中君は、海水パンツとサンダルしか身に着けておらず、その濡れた姿はたった今海から上がってきたばかりにも見える。 もう2人との距離は5歩くらいなので、早く手水舎に入って無事を確認したかったけれど、 「詩乃、そなたは暫しそこで待つのだ」 「あ、うん……」 なぜか、一歩進んだ所でレイネに止められた。 彼女は私を一時停止させたまま、傘を閉じて1人で屋根の下をくぐり、柱から梁まで目を凝らしてチェックした。まさか、罠でも仕掛けてあるのだろうか。 彼女は四隅の柱を1本ずつ触れてまわると、無言でうなずきながら私を手招きで呼び寄せた。どうやら、安全が確認されたらしいので、私も手水舎の中に入る事にした。 レイネが警戒していたので、おっかなびっくり足を踏み入れたけれど、特に何も起きなかった。中央には清めの水を貯めた石造りの桶(水盤(すいばん)というらしい)がどんと構え、あふれた水は左右に引かれた溝を通り、手水舎の外へと流れている――、何て事は無さそうなありふれた神社の設備だ。 「そんな事より……」、と水盤の右奥の柱にもたれかかっている田中君達の下へと近づいた。
/356ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加