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「手荒な真似はしたく無いが……」
この中におヘソがあるなら、入って取り戻すべきだ。
彼女は南京錠をつかむと、拳に力を込めた。すぐに錠前がバチバチと火花を散らして光った。きっとお得意の電撃で壊す気だ。
しかし、握り続けても錠前は光るだけで壊れないどころか、錆びついて茶色かった物がかえって磨かれたように美しい銀色に変化した。
「このような仕掛けになっていたとは、てこずらせてくれる……」
彼女は錠前から手を離すと、額にかいた汗を拭いながら階段を下りた。
そして、本殿に背を向けて10歩くらい進むと、再び扉の方へと向き直った。
「詩乃、離れていてくれ」
訳も聞かずに5歩後ろに下がると、彼女は左手を本殿に向けて伸ばした。
全身を静電気のような物が飛び交い、うっすらとしたオーラに包まれた彼女の髪が、その圧で巻き上がる。これは、前に見た時と同じだ!
間もなく、彼女の手のひらから青白い光が現れ、本殿の扉目がけてほとばしった。
これまでもバイクや車を走れなくさせた事のある、破壊力抜群の電撃。これなら、いずれ扉は突き破れる、そう思った。
なのに、電撃を受けている本殿はビクともせず、錠前が弾ける音も扉が焦げる煙も上がらなかった。
彼女の手から放たれる光が次第に太くなっても、建物がダメージを受けた様子は見られない。それとは反対に、本殿全体が彼女と同じようなオーラに包まれ、錠前に至ってはシルバーからゴールドに色が変化していた。まるで、電撃を吸収して自分の力に変えているみたいに。
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