小さな社の秘密

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「言葉が足らず、すまなかった……。だが、事の成否はそなたにかかっている。無駄に(はし)らす訳には()かぬ、今一度私を信じてくれ」 「わかったよ……」 彼女は伏し目がちに自分の至らなさを謝った後、すぐにじっと目を見て再びの協力を願い出た。てっきり怒られると思っていただけに、意外だった。この澄んだ青い瞳には弱い、もう一度信じる事にしよう。 「安心せい、まだヘソを取り戻す機会はある。このまま後生大事に本殿(なか)(たてまつ)る物でも無かろう。やがて外へと運ばれるはずだ、その時を見逃さなければ……」 彼女の予想が正しければ、2人のおヘソはこの後本殿から外へと運ばれるという。❝外❞とはつまり❝空の上❞、おヘソはカミナリ様が住む天界へと送られてしまう。 でも、誰が運ぶのだろう。さっき、近くにレイネ以外のカミナリ様はいないと言っていたし、この後空から降りて取りに来るのだろうか。それを彼女にたずねると、 「恐らく、降りては来ぬ。運び役を使うと考えるべきだ」 カミナリ様が直接取りに来るのでは無く、運び役に空の上まで持ってこさせるのだという。 「運び役は大抵、空飛ぶ者の姿をしている。2人のヘソを(たずさ)えて飛び立つ前に押さえるのだ。そなたも目を凝らして見張って欲しい」 「了解!」 「❝空飛ぶ者❞と言えば❝鳥❞?」と彼女に聞くと、「大方そうなるであろう」と言われたので、それからは2人して肉眼でのバードウォッチングを開始した。
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