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「ええっ! 俺っすか!?」
先生は私の左隣に座っていた瀧本君を指名し、彼女と席を替わるよう指示した。
「慣れない内は早川が隣でフォローしてやった方がいいだろ? みんな協力してくれるって言ったじゃんか」
「そりゃ、そうですけど……」
「じゃあ早川の席に天宮座らせるから、お前が代わりに面倒見てやるって事で。優しく教えてやるんだぞ」
「えっ、俺が!?」
瀧本君がびっくりするのも当然だ。いきなり席移動させられそうになったかと思えば、今度は私の代わりに彼女のお世話係だなんて、先生も無茶な事を言うなあ。
「うわ、瀧本えっろ! エロシェンコだー!」
「初日からいきなりナンパ!?」
「こらー、浮気すなー!」
「うるせー! エロくねえよ! ああ、わかりましたわかりました! 譲りますって!」
お笑い担当の男子生徒の声をきっかけに、クラス中からいじられて肩身が狭くなってしまった瀧本君は、渋々OKする羽目になった。
「よし、円満に交渉が成立した所で席替えタイム開始!」
「どこが円満なんだよ……。ったく、めんどくせーなぁ……」
赤沢先生は、しょんぼりとした様子の瀧本君を見て、ニタニタといたずらっ子みたいな笑みを浮かべていた。作戦が上手く行ってご機嫌なのか、先生のくせに生徒をからかって遊んでいるのか、どっちなんだろう。頼もしいやら怖いやら、入学して1ヶ月ではまだ判断が出来なかった。
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