大切な物はいつも

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神社のモチまきで鍛えたキャッチングを以ってすれば、そう難しい事では無いはずだ。しかも、お祭りの時と違い、ここには競り合う相手もいない。 もう手乗り文鳥サイズにまで縮んだ鳥。とうとうその首から紐が外れ、袋だけが落下してきた。 両手を顔の前に出して受け止める準備はOK。キャッチしたらすぐレイネに渡そう。 ところが、ライバルは意外な所から現れた。 「うぇっ!?」 突然、一羽の鳥が(ちゅう)を真一文字に飛んで来た。 姿形は運び役の白い鳥に似ているが、こちらは不気味なくらいメタリックに黒光りしている。 黒い鳥は降下中の袋をくちばしでキャッチすると、私の頭上を挑発的にかすめながら、入口の方へ飛んで行った。 しまった、黒い鳥におヘソの入った袋を横取りされた! 私は、トンビに油揚げをさらわれてしまった時のように、呆然とその後ろ姿を見送る事しか出来なかった。 黒い鳥は獲物を手に入れて上機嫌なのか、袋を見せつけるかのようにレイネの近くを通過する。カミナリ様と知ってか知らずか、警戒心0のフライトなのに、彼女は腰を落としてうつむいたままだ。エネルギーを消費してしまい、何の手出しも出来なかった。 それもそのはず、今朝補給して以来ぶっ通しで行動していたのだから。今日のハードスケジュールを思えば、途中で倒れていないのが不思議なくらいだった。
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