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光の密度が高まるにつれ、黒い鳥の逃げ場は鳥カゴの幅よりも狭まった。
しばらくは悪あがきとばかりにアクロバット飛行でやり過ごしていたが、やがて何本もの稲妻がその身をかすめると、黒鉄の羽根を次々と空中に散らした。
そして、ついに一筋の稲妻に胴体の中心を貫かれると、
「ギョエーーーーーー!!」
空中で爆発を起こし、不気味な断末魔の叫びを上げて消滅した。
「ふん、最期まで悪趣味な」
爆発があったのは彼女の後ろ側で、ずっと私のおなかの方を見ていた彼女は、直接その瞬間を見てはいなかった。振り向かぬまま撃墜し、鳴き声で勝利を確信、更には勝利宣言代わりのクールな感想。改めてすごい力だと思うし、相当の自信があったに違いない。
「詩乃、有難う。そなたのお陰で窮地を脱する事が出来た」
「そう、それは良かったよ」
私に労いの言葉をかけながら、ゆっくりとおなかにあてた手を離す彼女。風邪を引いてしまうといけないので、そろそろおなかをしまわないと。
「いや、暫し待ってくれ」
「えっ?」
Tシャツのすそを下ろそうとした所、彼女から待ったをかけられた。もしや、第2・第3の運び役が現れたのだろうか。
「しかし美しい。実に素晴らしきは詩乃がヘソ」
「もうしまうよ……」
時と場所を考えずにおヘソ鑑賞をしてしまうのが、彼女の悪い癖だ。これが無ければ、もっとカッコいいんだけれどな。
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