大切な物はいつも

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「よし、ヘソを拾いに行こう」 あとはおヘソを回収して2人に返すのみ。ダッシュで黒い鳥が爆発した現場に向かった。 大股で15歩分離れていた現場には、花火をした後の黒い燃えカスに似た円が広がり、その中心には先程同様に折り鶴が落ちていた。 「こちらも大事無いようだ」 彼女が拾い上げた折り鶴は、珍しい黒のメタリックな紙で折られていた。激しい稲妻の直撃を受けた為に、羽や首がクシャリと折れ曲がっていたが、焦げても破れてもいなかった。これ程までに丈夫なのも、普通の紙では無いからなのだろう。 「こっちも折り鶴だったんだね」 「ああ。だが、白い方の(まこと)の鳥と寸分違わぬ姿に比べれば、こちらはまるでハリボテだった。頭は大きく羽根は短く、全く均整がとれておらぬ」 「私には速すぎてわからなかったなあ」 「折り方が雑だからこうなるのだ」 同じ折り鶴でも、白い鳥と黒い鳥とではクオリティーが段違いだったようで、彼女は2羽を手のひらの上で休ませながら、専門家のようにその差を指摘した。カミナリ様は動体視力もいいんだなあ。 「詩乃、そこの袋を拾ってくれ」 そう、肝心なのはおヘソの入った袋の回収だ。焦げた円の外に、赤いちりめん生地に花模様が散りばめられた、和柄の巾着袋が落ちていた。
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