大切な物はいつも

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あれだけの稲妻が降り注いでいたので、袋の状態が気になる所だ。 上から見下ろした袋は、花びら一つ焦がさず美しい色合いを保っていた。拾い上げて裏表を見回しても、電撃に貫かれて穴が開いている所は無く、さすがはカミナリ様御用達のタフさだ。 だが、ひもでぎゅっと堅く絞られていたはずの口はルーズに広がっていて、やけに平らな袋は、中に物が入っている触り心地も重さも感じられなかった。 嫌な予感がした。胸の中で動悸という名のモンスターが助走をつけているのを感じ、一刻も早くストップさせようと、袋の口を親指と人差し指で作った輪っかに掛け、もう片方の指先で広げて中を覗き込んだ。 「あれ、何も入ってない!?」 中は完全に空っぽで、袋を逆さにしても何も落ちて来なかった。手品じゃあるまいし、こんな冗談は無しにして欲しかった。 「何で……?」 「私とした事が、力加減を誤ったか……」 動悸はブレーキをかけずに猛ダッシュで目の前に迫り、私は半ば諦めたように呆然としてしまった。その横ではあごに手を当てて静かに反省の弁を述べる彼女がいた。 「お、お、おヘソはどこ行ったの!?」 「どうやら、稲妻が当たった衝撃で袋から飛び出してしまったに違いない。カラスにでも(ついば)まれたら(こと)だ。手分けして辺りを探すのだ!」 「もう、了解ぃ!」 きっとどこかにはある! そう自分に言い聞かせて、狂暴化した動悸をなだめる為のおヘソ探しに向かった。
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