大切な物はいつも

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おヘソがどこにあるかの見当はあやふやだった。レイネは爆発の瞬間後ろを向いていたし、前を向いていた私も爆発が激し過ぎて、どこに転がって行ったかは見えなかったからだ。 彼女から「ヘソの形はわかるか?」と聞かれたので、「まあ、何とか」と答えて、二手に別れた。たしか、前にレイネが人から抜き取った物を見た時は、一口サイズのお団子のような形だったと思う。 その姿を思い浮かべつつ、腰を曲げて一歩一歩玉砂利の上をくまなく見渡す。神社で下を向いて探し物をするのは、お祭りの夜に落としてしまった100円玉を見つけた時以来で、お金と違って輝かない物をアマチュアの私が上手く見つけられるだろうか。うっかり見落として踏んづけないようにしないと。 そう細心の注意を払って探しているにもかかわらず、見つからないままあっという間に壁際までやって来た。壁沿いには所々雑草が伸びていて、その間に紛れていたら探すのも一苦労だ。何とかそれよりも手前で止まっていて欲しい。 その願いが通じたのか、雑草の1m手前に丸いかたまりが落ちているのを見つけた。オレンジよりも薄い色したそれは、真ん中がシワになってへこんでいて、おヘソに似ている。 だが、地面に落ちていたせいで砂が付いて汚れており、全体的にくすんで血色が悪く見える。以前、彼女が「鮮度の落ちたヘソは腹にくっつけられなくなる」みたいな事を言っていたのを思い出し、嫌な汗がジワリと浮いて来た。 もしこれがおヘソだとしたら、もはや一刻の猶予も無い。おそるおそる指で摘まみ、反対側の壁際にいた彼女の所まで持って行った。 「レイネ! これ……」 私の手のひらに乗っている丸いかたまりを、彼女はどう鑑定するだろうか。摘まんだ時の感触が人肌の様に柔らかかったのが、余計に怖かった。
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