ランチタイム

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さっきまでくだらない事で乱闘騒ぎになっていて、挨拶どころじゃなかっただろうに。田中君をフォローするにしてもだいぶ無理がある。 「初めまして、天宮レイネです。どうぞ宜しく」 すると、彼女は近くにいた女子に自分から名乗り、握手を求めた。 「えっ、私!? う、うん。よろしく……」 急に求められた側は少し驚いたものの、すぐに手を差し出して握手に応じた。 「俺も俺も! 2-Dの青島ね。軽音部やってるから、よろしくな!」 「これはこれは。宜しくお願いします」 「私、2-Bの平塚。詩乃ちゃんのお兄ちゃんと同じクラスだよ」 「お兄様のご学友でしたか。どうぞ宜しくお願いします」 1人目の挨拶を皮切りに、彼女はその場にいる一人一人に丁寧な挨拶をして回った。その姿は選挙活動をしている政治家みたいで、そうやって見ると相手も支援者っぽく見えるし、ちょっと笑いそうになってしまった。ともあれ、彼女の作った変な空気のおかげで、次第に土下座ムードもうやむやになっていった。 「千佳ちゃん、田中君の事許してあげたら?」 「レイネちゃんがいいなら許してあげるよ。……ほんとは納得行かないけどっ!」 千佳ちゃんのお許しも出て、どうにか現場は落ち着きそうだ。後はレイネが挨拶し終えるのを待つだけだ。 少しして、全員への挨拶を終えたレイネが戻ってきた。上々の手ごたえをつかめたのか、うっすらとにこやかな笑みを浮かべていた。
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