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「ちなみにこれ、❝どっち❞の?」
「❝彼の❞だな。海の家の前ですれ違った時に見た」
先に見つけたのは、田中君の方だった。すれ違ったのはほんの数秒だったのに、目ざとく見ているものだ。
「鈴木さんのも見つけてあげなくちゃ」
「近くに落ちているであろう。そなたはそちらを見てくれ」
スーパーボール、スーパーボールと……。頭にイメージしながら中腰の姿勢で地面をサーチすると、壁際で何かがきらめいていた。3歩進んだ先に落ちていたのは、光沢感のある透明な丸い玉だった。
「見つけた!」
拾った物を陽の光に透かして確認すると、先程と同じく小さなお餅のような物が閉じ込められており、真ん中がアーモンドの形にへこんだかたまりは、田中君のと違ってキラキラと輝いていた。
これは鈴木さんので決まりだろうと、すぐにレイネに手渡した。
「どれどれ。まず彼女の物と見て間違い無いが……。うーむ……、何と言う事だ……」
レイネの鑑定でも、鈴木さんの物だという結果が出た。だが、彼女は鈴木さんのおヘソを見つめながら、出し過ぎた濃いお茶を含んだ時のように渋い表情を浮かべてため息をついた。保存状態に何か重大な問題でもあったのだろうか。
「ピアスは感心せんな」
「はい?」
彼女が気になっていたのは、鈴木さんのおヘソにピアスが付いていた事だった。実は、玉がきらめいていたのもピアスのシルバーとストーンの輝きによる物で、ギャルの鈴木さんっぽいアクセだと思った。
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