大切な物はいつも

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レイネは斜め下に目線を合わせて彼の事をじっと見つめていた。詰め寄られているのに静かで堂々とした佇まいだ。そして、短いため息をつくとまたすぐに長く吸い込み、 「たわけ! 禁漁区から()ってきた癖に猛々(たけだけ)しいぞ!!」 「ひえっ!!」 鬼の形相に虎の雄叫びのような声をあげて、彼を一喝した。真っ先に声を出して驚いてしまったのは私だ。だって、彼女の後ろで一瞬小さな雷が落ちていたのだから。 「うっ、何でそれを……!」 彼女の言っていた事は図星だったようで、彼は禁漁区で魚を獲っていた事がバレて大きくうろたえていた。 「貴様のせいでどれだけの人間が迷惑したかわかっているのか!? よくも自分勝手な振舞いで和を乱し、旅の一幕を泥で汚してくれたな! 上っ面だけ剽軽(ひょうきん)を気取る愚か者が! 人の気持ちが(わか)らぬ貴様に道化(どうけ)の役など務まるものか!」 「ぐっ……」 彼女は続けてお得意のお芝居みたいな言葉で、彼を責め立てた。このモードに入ったという事は、相当怒っていたんだろうな。 「レイネ、言い過ぎじゃないかなぁ……」 「天宮さん、一旦クールダウンしよ!?」 「いいや、許せぬ!! 時を戻せぬ事ぐらいわかっているであろう!?」 こうなってしまうと、鈴木さんと2人がかりでもブレーキが効かない。このまま彼女の怒りが収まらないのも心配だ。
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