大切な物はいつも

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「……わかってるよ。わかってんだよ、そんな事!!」 レイネの圧に負けて黙っていた彼が、下を向きながら答えた。そして、顔を見せない様後ろを向くと、 「ちくしょう! もうおしまいだ……」 ギブアップの言葉を吐きながら、一滴の涙を水路にこぼしてしまった。 「もうおしまいなんだよ……。うっうっ……」 続けてポツポツと水路に落ちる涙の粒は、海に還って行った魚達を追いかけるように流れていく。しゃくりあげて泣く彼の背中を、鈴木さんがそっとさする姿を見て、なんだかとても切ない気持ちになった。 「あのさ、天宮さん。今は許してあげてくれないかな……? コイツなんか無理しちゃったみたいなんだ」 「……(わか)った」 その姿に罪悪感を覚えてしまったのか、鈴木さんたってのお願いにレイネは髪をかき上げながら静かに応じた。 「俺なんて、雷に打たれて死ねばよかったんだ……」 「もう、そんな事言うなし……」 「雷を甘く見るんじゃない」 すっかり元気を失った田中君を優しくフォローする鈴木さん。レイネのツッコミは相変わらずズレているが、何となく雨降って地が固まってきたような気がした。さあ、そろそろ海の家に帰ろう。
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