大切な物はいつも

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社を出て、雨が上がった坂道を4人で下る。時刻は16時10分。出発は16時30分だとすると、間に合わせる為にはかなり走らないといけないだろう。 ひとまず無事を報告しなくてはと、海の家にいる保健の小野寺先生に電話をかけた。電話口の先生は呆れ気味にため息をつきながら、「気を付けて戻ってらっしゃい」と言ってくれた。なお、担任の赤沢先生も小野寺先生の隣にいて、「お前達、あまり心配させるなよ! とにかく早く戻ってこい……」と焦った口調でたしなめられてしまった。長くお説教されずに電話は終わったけれど、海の家に戻るのが少し怖くなった。 肌寒さが残る竹林の中、田中君はチャラーノ柄のアロハを羽織り、鈴木さんもおなかが見えるTシャツのすそ結びをほどいていたが、 「あれ? ピアスが無くなってる!?」 おヘソについていたはずのピアスが、外れて無くなっている事に気が付いた。もう社に戻る時間は無さそうなので、どこかにあるといいのだけれど……。 「あっ、ちっちゃいポケットに入ってた。何でだろ?」 それは、慌てて手を入れたタイトなジーンズのコインポケットから無事発見されたが、彼女は入れた覚えが無いようだ。という事は……。 「あの、もしかして……」 「天下の大罪だからな」 やっぱりレイネの仕業だった。彼女曰く、さっきおヘソをくっつけた直後に、こっそり抜き取ってねじ込んだらしい。まるで手品師みたいな早業だ。 「さあ、急がないと出発時間に間に合わなくなっちゃうね」
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