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「バス使えばいいだろ? 下ったとこの国道にバス停あるから、それ乗れば5分もかからずに海の家の前に着くぞ」
「ああ、助かった……」
ここは田中君がご当地のバス事情に詳しかった。たぶん、さっき休憩しようとしたバス停の事だろう。たしかに、かなり長く走ってきたように思える道のりも、車ならあっという間だ。でも偉そうに、誰のせいでこんなに苦労したと思っているんだか。
「でも、ちょうどいいタイミングでバスが来るかビミョーだから、ケータイで調べてみるわ」
「アンタのケータイ、ぶっ壊れてたじゃん」
これは自分で調べた方がいいかも。一旦立ち止まってスマホを取り出そうとした時、
――「急いで! もうすぐバスが来ちゃうよ」――
「えっ、誰!?」
ふと、下り坂の左前方から見知らぬ女の人の声がした。
「彼女だろうな」
「ん?」
レイネが指差したのは、もうすぐ目と鼻の先に近づいた道祖神様だ。田中君達はおしゃべりに夢中で何の反応も無い。もしかして、女神様の呼びかけが直接私達2人の頭の中に入ってきているって事!?
――「詩乃ちゃん、さっきは美味しい飴をどうもありがとね」――
今度は男神様の甘くささやくような声も聴こえてきた。お供えした飴玉はすっかり無くなっていた。からかったくせに、そんなイケボで言ったってダメなんだから。
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